ここでは、刑事事件において被害者と示談を成立させることのメリットや、示談交渉を弁護士に依頼すべき理由などについて解説しています。
刑事事件を起こしてしまった方、告訴されたかもしれないと考えている方、被害者と示談交渉すべきか迷っている方など、ぜひ参考にしてください。
刑事事件で示談をするメリット
まず、示談とは、裁判ではなく当事者同士の話し合いにより解決を図る手段です。
民事上の解決手段のため、示談したからといって直接的に刑事責任が免除されるものではありませんが、刑事手続き・処分に大きな影響を与えることも少なくありません。
以下に、示談の成立が刑事手続き・処分にどのような影響を与え得るのか、主なものをまとめました。
告訴の取り下げ・取り消し等
すでに告訴がなされているケースでは、その告訴について取り下げ・取り消しをする約束を含めた示談の交渉が行えます。
また、まだ告訴されていないケースにおいては、告訴しないことを条件に示談を成立させることになるでしょう。
告訴を行わない、あるいは取り下げる旨の約束を含めた示談が成立すれば、逮捕、起訴、重い刑罰等を免れる可能性が上がります。
逮捕の回避
上で説明したように、告訴を行わない、あるいは取り下げる旨の約束を含めた示談が成立すれば、逮捕を免れる可能性が上がります。
もちろん事件の内容にもよりますが、警察に“当事者同士ですでに事件の解決が図られている”と捉えられれば、逮捕の必要性が低いと判断されるかもしれないからです。
また、まだ警察に認知されていない事件の場合は、そもそも刑事事件になるのを防げる可能性があるため、逮捕も免れ得ます。
早期釈放
すでに逮捕され、身体拘束を受けている場合であっても、被害者との示談成立により、早期に釈放される可能性が上がります。
“逃亡や証拠隠滅を図る恐れはないため、勾留の必要もない”と判断されるかもしれないからです。
早期釈放されれば、会社からの解雇など、社会生活における不利益の軽減につながるでしょう。
不起訴処分
被害者との示談が成立していることを理由のひとつとして、検察官が不起訴処分を行うこともあります。
被害者がいる犯罪において、被害者との間で示談がなされているかどうかは、起訴・不起訴の判断に大きな影響を与えるポイントとなるのです。
刑事処分の軽減
起訴されてしまったとしても、示談が成立している事実によって、刑事処分の軽減が期待できます。
“当事者間ですでに解決がなされているのであれば、それほど重大な刑事処分を与える必要はない”といった判断がなされるかもしれないからです。
示談は弁護士に依頼すべき!その理由とは?
ここまで解説してきたとおり、刑事事件において、被害者との示談は非常に重要です。
しかし、示談交渉を加害者自身やその家族で行うのはあまりおすすめできません。弁護士に依頼しましょう。
以下に、なぜ示談交渉を弁護士に依頼すべきなのか、その理由をまとめました。
示談金額が適正か判断できる
多くの人は、示談金額の相場について知識を持ち合わせていません。
もし、被害者から相場を外れた高額な示談金を求められても、それが適正ではないという判断がつかないでしょう。
また逆に、そのケースに見合わない低い示談金額をこちらが提示してしまった場合、被害者に「誠意がない」と捉えられてしまうかもしれません。
刑事事件に慣れている弁護士なら、互いに納得のできる適正な金額で示談交渉を進めてくれます。
示談交渉を進めやすい
示談交渉を行うためには、まず、被害者の連絡先を知る必要があります。
しかし、二次被害防止の観点等から、捜査機関は、被疑者やその家族に対して被害者の連絡先を教えません。
また、もし被害者の連絡先をもともと知っている場合でも、示談交渉のために直接接触することはなるべく避けた方が良いです。
脅迫や強要などと捉えられてしまい新たな刑事責任を追及されるといった事態や、証拠隠滅を図った疑いで逮捕・勾留されるといった事態に発展しかねません。
弁護士なら、捜査機関を通して示談したい旨を伝え、被害者の承諾を得て連絡先を入手してくれることが期待できます。
また被害者に接触を拒否されているケースでも、被害者感情に配慮しつつ話し合いを求め、示談交渉にこぎつけてくれる可能性があります。
示談書には何を書く?
示談では通常、話し合いで決めた内容を書面(示談書)に残します。
示談書の内容について正式に定められてはいませんが、刑事事件においては以下に挙げる項目を入れておくことが大切です。
清算条項
後になって蒸し返されることを防ぐために重要な項目で、「示談書に記載された内容以外には何ら債権債務が存在しないことを相互に確認する」といった事を記載します。
宥恕条項
「宥恕(ゆうじょ)」は「許す」という意味で、宥恕条項では「甲は乙の刑事処分を望まない」といった文言を記載します。
これにより、被害者の処罰感情が緩和されていることを示せるため、不起訴処分や刑の減軽につながることが期待できます。
示談金に関する事
被害者が被った損害を示談金で回復させるべく、示談金額や支払い方法、支払い期日などを記載します。
示談成立後すぐに一括で示談金を支払うことができると、起訴・不起訴や量刑の判断において、より有利に働きます。
被害届や告訴の取り消し
被害届や告訴状の提出前であれば、告訴や被害届を提出しない旨を、すでに被害届や告訴状が提出されている場合は、被害届や告訴を取り下げる旨を盛り込むと、被害者の処罰感情が緩和されているとの評価につながります。
不起訴処分や刑の減軽が期待できるでしょう。
まとめ
今回は、刑事事件において被害者と示談するメリットや、示談交渉を弁護士に任せるべき理由などについて解説しました。
最後に、今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
■刑事事件における示談の成立は、告訴の取り消しや逮捕の回避、早期釈放、不起訴処分、刑事処分の軽減などの効果が期待できる。
■示談金額の判断やスムーズな示談交渉のために、示談は弁護士に一任すべき。
■示談書には、清算条項や宥恕条項、示談金に関する事、被害届や告訴を取り消す旨などについて記載する。