ネット掲示板やSNSなどで誰かから誹謗中傷を受けた場合、侮辱罪での告訴や損害賠償請求を行える可能性があります。
こちらのページでは、侮辱罪で告訴するための条件(成立要件)や、侮辱罪の法定刑、告訴の仕方などについて解説しています。
また、民事責任の追及についてや、自分が侮辱罪で告訴された場合の対処法などについてもまとめました。
ネット上で侮辱を受けた際の対処法について知っておくべきポイントをしっかり押さえられるので、ぜひ参考にしてください。
侮辱罪とは?成立要件をチェック!
侮辱罪は告訴されなければ起訴できない「親告罪」のため、犯人の処罰を望むのであれば刑事告訴する必要があります。
では、具体的にどのような侮辱被害に遭った場合に、侮辱罪で告訴することができるのでしょうか?
以下で侮辱罪の成立要件を見ていきましょう。
point1「事実を摘示しなくても」
侮辱罪とは、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」ことにより成立する犯罪です(刑法231条)。
冒頭の「事実を適示しなくても」という点がポイントで、たとえば「馬鹿」「ブス」といったような抽象的な表現でも、侮辱罪として成立する可能性があります。
この点が、「事実の適示」が成立要件となっている名誉毀損罪との大きな違いです。
なお、どの程度の表現であれば侮辱罪が成立するのかという明確な線引きはなく、事の経緯や内容等により総合的に判断されることになります。
point2「公然と」
侮辱罪として成立するためには、「公然と」という成立要件も満たしていなければなりません。
たとえば、ネット掲示板やSNS、ブログのコメント欄への投稿などは誰でも見られるため、公然性が認められる可能性が高いでしょう。
一方、個別メッセージや、周りに人がいない密室での侮辱行為などは、公然性が認められないのが一般的です。
侮辱罪の法定刑
侮辱罪には、法定刑として「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」という内容が定められています。
もともとは拘留または科料のみでしたが、ネット上での誹謗中傷被害が増加していることを背景に2022年7月から厳罰化されました。
侮辱罪で告訴する方法
既述のとおり、侮辱罪は親告罪のため、犯人の処罰を望むならば告訴する必要があります。
犯人の処罰を求める意思や犯罪事実を具体的かつ明確に記載した告訴状を作り、管轄の警察署へ提出しましょう。
告訴状の作成や提出に関する注意点については「 ️☞告訴状の書き方をわかりやすく解説!」「 ️☞告訴状の提出先は?」のページでくわしく解説しています。
告訴後の流れ
告訴が受理されると、捜査が行われます。
そして検察に事件送致がなされると、その後は検察官が起訴・不起訴を決めます。
起訴されれば刑事裁判が行われ、裁判官の判決により刑が決定されます。侮辱罪の法定刑は、前記「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。
民事責任の追及も可能
侮辱罪にあたり得る行為の被害に遭った場合、刑事告訴とは別に、民法上の不法行為(民法709条)に該当するとして民事責任を問うことも可能です。
具体的には、損害賠償請求(慰謝料請求)です。
前記刑法上の侮辱罪として有罪にならなかったとしても、民事上の損害賠償請求が認められる可能性はあります。
ただし、あくまで民事上の責任であるため、相手が処罰されるわけではありません。
なお、損害賠償請求する場合には、内容証明郵便を利用することがよくあります。内容証明の作成における注意点や書き方などについては姉妹メディア「 ️☞内容証明ナビ」で解説しているので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
自分が侮辱罪で告訴されたら…
もし自分が侮辱罪で告訴されてしまったら、まずは専門の弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、謝罪や示談交渉など適切な対処法を示してもらえるでしょう。
同じ弁護士でも得意分野はそれぞれ異なるため、こうした分野に強い弁護士を選ぶことが大切です。
まとめ
今回は、侮辱罪での告訴について、受理されるための条件や法定刑の内容、また自分が侮辱罪で告訴された場合の対処法などを解説しました。
最後に、今回の内容をおさらいしておきましょう。
■侮辱罪は、「馬鹿」「ブス」といった抽象的な表現でも成立する可能性がある。
■侮辱罪として成立するには「公然と」という成立要件も満たすことが必要。
■告訴が受理されると捜査が行われ、検察に事件送致がなされると検察官が起訴・不起訴を決定。起訴されれば刑事裁判となる。
■侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」。
■侮辱行為は民法上の不法行為に該当するとして民事責任を問うことも可能。
■もし侮辱罪で告訴されたら、専門の弁護士に相談するのがおすすめ。