ここでは、「被害届」と「告訴状」の違いについて、くわしく解説しています。
どちらも犯罪被害に遭ったときに使われるものですが、何がどう違うのか、それぞれどのような事を書くものなのか、などは知らない方も多いと思います。
いざ犯罪被害に遭ってしまったときに、速やかにかつ適切な対処がとれるよう、ぜひ被害届と告訴状の違いを押さえておきましょう。
「被害届」と「告訴状」の違いとは?
まずは被害届と告訴状のそれぞれについて、どのような書類なのかを以下にまとめました。
被害届とは?
被害届は、警察をはじめとした捜査機関に、犯罪被害を受けた事実を申告するための書類です。
警察は、被害届を出されたら受理する必要があります(犯罪捜査規範61条)。
この被害届の提出により、事件が起きた事実が捜査機関に把握され、捜査開始の端緒となります。
告訴状との違いを考えるうえでは、あくまで犯罪被害を受けた事実を申告するものであって犯人への処罰を求めるものではない、というところがポイントになります。
告訴状とは?
告訴状は、犯罪被害者をはじめとした告訴権者が、犯罪事実を捜査機関へ申告し、犯人への処罰を求めるための書類です。
本来、告訴は書面(告訴状)によらず口頭のみでも可能ですが、実際は、事実関係や処罰意思を明確にするために、告訴状を書いて提出するのが一般的です。
告訴状が受理されると、捜査機関は、検察官への書類送付や、不起訴処分の結果通知についての義務を負います。(刑事訴訟法242条、260条)。
この点と、犯罪事実の申告だけでなく犯人への処罰を求めるものであるという点が、被害届との違いを考えるうえでのポイントになります。
何が違うのか?
被害届と告訴状は、どちらも犯罪被害に遭った事実を申告するものであり、捜査の端緒になるものです。
では何が違うのかというと、
上でも触れているとおり、被害届はあくまでも犯罪被害を受けた事実を申告するためのもの、一方の告訴状は、それに加えて犯人への処罰を求めるためのもの、という点です。
また上述のとおり、被害届と違って告訴状の場合は、受理されると、検察官への書類送付義務や、不起訴処分の結果を通知する義務が捜査機関に発生します。
この点も、大きな違いと言えるでしょう。
こうした違いから、もし犯人への処罰を強く望んでいるのであれば、被害届よりも告訴状を提出することをおすすめします。
とくに、被害に遭った犯罪が親告罪である場合、告訴しないことには犯人が起訴されることもないため、告訴する必要があります。
(★親告罪とは何か?については、「👉️親告罪とは?」のページでくわしく解説しています。)
ただし、告訴状はそう簡単に受理してもらえるものでもなく、とくに個人で作成した告訴状の場合は、なかなか受理してもらえない…というケースも少なくありません。そのため、ひとまず被害届を出し、それから告訴状の提出に向けて動くという流れも良いでしょう。
書き方
最後に、被害届と告訴状の書き方について解説します。
それぞれについて、記載すべき主な項目や注意点をまとめました。
被害届
被害届に決まった書式などはありませんが、被害の状況を警察にきちんと理解・処理してもらうためには、なるべく詳細かつ正確に被害の内容を伝えることが重要となります。
具体的には、以下のようなことを盛り込む必要があるでしょう。
・被害者の住所・氏名・年齢・職業
・被害の日時、場所
・被害の態様(具体的に)
・被害金品
・犯人の特徴
・遺留品、その他参考となる事柄
なお、被害届を提出する場所については、警察署でも派出所でも問題ありません。
告訴状
告訴状も、被害届と同様に、定められた書式はありません。
しかし、受理されやすい告訴状にするためには、通例に沿ってポイントを押さえた書面に仕上げる必要があります。
告訴状の書き方については「👉️告訴状の書き方をわかりやすく解説!」のページでくわしく紹介しているので、そちらからご確認ください。
まとめ
今回は、被害届と告訴状の違いについて解説をしました。
最後に、今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
■被害届はあくまでも犯罪被害を受けた事実を申告するためのもの
■告訴状は、犯罪事実の申告に加えて犯人への処罰を求めるもの
■告訴状が受理されると、捜査機関には、検察官への書類送付義務や、不起訴処分の結果を通知する義務が生じる
■犯人への処罰を望む場合は、告訴状の提出が適している
■被害届にも告訴状にも定められた書式はないが、ポイントを押さえて作成する必要がある。