
もし誰かから暴行の被害に遭った場合、結果的に怪我を負わなかったとしても、「暴行罪(刑法208条)」で犯人を告訴することができます。
こちらのページでは、「暴行罪」での告訴について、知っておきたいポイントや注意点をまとめました。
暴行の被害に遭ってしまった方で刑事告訴を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
なお、当メディアでは、暴行罪と内容が似ている「傷害罪」についても解説しています。「 ️☞傷害罪で告訴するには?成立要件や注意点を解説」でご確認ください。
暴行罪とは?成立要件を解説
暴行罪は、他人に対して暴行を加えることにより成立する犯罪です。
「暴行」とは「他人の身体に向けた有形力の行使」であると解釈されており、直接的な身体への接触がなくとも、有形力の行使と認められれば暴行罪の成立要件を満たすことになります。
以下に、直接的に身体に触れるものと触れないものに分けて、暴行罪が成立する可能性のある行為をまとめました。
「暴行」の内容をチェック
▼身体に触れる行為の例
・顔や身体を殴る
・顔や身体を蹴る
・胸や肩などをど突く
・髪を引っぱる
・羽交いじめにする
▼身体に触れない行為の例
・襟首を掴む
・ネクタイを引っぱる
・唾をかける
・目の前に石などを投げつける
・耳元で大音量を鳴らし意識を朦朧とさせる
故意による行為であることも要件
暴行罪が成立するためには、その行為が故意によるものであることも必要です。
たとえば、「腕を広げたら偶然殴るかたちとなってしまった」といったケースでは暴行罪が成立しません。
ただ、「腕を広げれば誰かに当たる可能性があることは認識していた」など「未必の故意」があった場合には暴行罪が成立し得ます。
暴行罪と傷害罪の違いとは?
傷害罪は、「人に傷害を負わせること」によって成立する犯罪です。
つまり、暴行に及んだ結果、傷害が生じれば「傷害罪」が、傷害が生じなければ「暴行罪」が成立し得るということになります。
傷害罪の告訴については、「 ️☞傷害罪で告訴するには?成立要件や注意点を解説」でくわしく解説しているので併せて参考にしてください。
暴行罪の法定刑
暴行罪の法定刑は、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。
暴行罪で告訴する方法
暴行罪は、「親告罪」ではないものの、意図的な加害行為であることから被害者の処罰感情が強くなりやすいことや、何らかの通告がなければ発覚しにくいことなどから、刑事告訴の対象になりやすい犯罪のひとつと言われています。 ️
告訴をしたい場合には、処罰を求める意思や犯罪事実を具体的かつ明確に書いた告訴状を作り、警察署に提出しましょう。
告訴状の書き方や出し方に関する知識は「 ️☞告訴状の書き方をわかりやすく解説!」「 ️☞告訴状の提出先は?」のページからチェックいただけます。
暴行事件を起こしてしまったらまずは弁護士に相談!
万が一自分が暴行事件を起こしてしまった場合、穏便な解決のカギとなるのは「示談交渉」です。
「示談」は当事者の話し合いにより問題を解決する手続きで、一般的には、加害者が被害者に誠意ある謝罪をしたうえで示談金を支払い、被害届や告訴を取り下げてもらうべく交渉します。
示談が成立すれば、捜査機関から「当事者間で既に和解している」と評価されるため、逮捕や重い刑罰を免れる可能性が上がります。
ただ、多くの場合被害者は加害者に怒りや恐怖を抱いているため、被害者と直接話し合いを行い示談交渉を進めることは簡単ではありません。
また、被害者からやたらと高額な示談金を提示され、トラブルになることも考えられます。
そのため、もし暴行事件を起こしてしまったら、まずは弁護士に相談し、示談交渉を進めてもらうのがおすすめです。
逮捕されてしまった場合でも、不起訴処分の獲得に向けて、捜査機関に働きかけてくれるでしょう。
まとめ
今回は、暴行罪での告訴について、暴行罪が成立するための要件や法定刑の内容、また自分が暴行事件を起こしてしまった場合の対処法などを解説しました。
最後に、今回の内容をおさらいしておきましょう。
■暴行罪は、他人に暴行を加えることにより成立する犯罪
■直接的な身体への接触がなくても有形力の行使と認められれば暴行罪の成立要件を満たす
■暴行罪が成立するには、その行為が故意によるものであることも必要
■暴行に及んだ結果、傷害が生じれば「傷害罪」、傷害が生じなければ「暴行罪」が成立し得る。
■暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」
■暴行事件を起こしてしまったら弁護士に相談するのが賢明