
不注意により誰かをケガさせてしまった場合に成立する過失傷害罪。
こちらのページでは、そんな過失傷害罪の構成要件や刑罰の内容、また「傷害罪」との違いなどについて解説しています。
さらには、過失傷害罪で逮捕されるかどうかについても解説しているので、過失傷害罪での告訴や逮捕について知りたい方はぜひ参考にしてください。
過失傷害罪とは?構成要件をチェック
過失傷害罪は、過失によって人にケガを負わせることで成立する犯罪であり、刑法第209条に定められています。
刑法には、罪を犯す意思のない行為については罰さないことが定められていますが(刑法第38条)、法律に特別な規定がある場合はこの限りでないという定めもあります。
つまり、過失傷害罪は刑法の特例と言っていいでしょう。
過失傷害罪の構成要件
過失傷害罪は、下記3つの条件が揃うことで成立します。
①過失があった
②人がケガをする等傷害の結果が起きた
③過失と傷害に因果関係があった
①過失があった
悪い結果が生じる可能性を考慮しその結果を避ける為の義務を怠った不注意やミスがあった場合に、過失があったとされます。
②人がケガをする傷害の結果が起きた
過失傷害罪が成立するには、①の過失によって、人がケガをする傷害の結果が生じることが必要です。
この「傷害」とは生理機能に障害を与える行為を指し、外傷を負わせることはもちろん、「PTSDなどの精神疾患を負わせる」「病気を感染させる」「失神させる」といったことも含まれます。
③過失と傷害の結果に因果関係がある
過失のあった行為と、傷害の結果との間に、因果関係があることも必要です。
過失傷害罪と傷害罪の違い
過失傷害罪と似ている犯罪のひとつに「傷害罪(刑法第204条)」というものがあります。
傷害罪とは、他人の身体に対し暴行を加えるなどして、人を傷害した場合に成立する犯罪です。
この傷害罪と過失傷害罪の違いは、「過失」と「故意」にあります。
既述のとおり過失傷害罪は、「過失」により人にケガを負わせることで成立する犯罪です。
一方の傷害罪は、「故意(わざと)」がある場合に限って成立します。傷害を生じさせる意図までは要りませんが、人に暴行を加える認識がなければ成立はしません。
なお、当メディアでは、傷害罪の告訴についてもくわしく解説しているで、ぜひ併せて参考にしてください。
☞傷害罪で告訴するには?成立要件や注意点を解説
過失傷害罪の法定刑
過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金または科料」です。
罰金しか定められていない、比較的軽微な犯罪と言えるでしょう。
過失傷害罪で逮捕されるケースは多くない
過失傷害罪で逮捕されるケースとしては、被害者が通報して現行犯逮捕される、被害者により被害届や告訴状が提出されて通常逮捕される、といったものが考えられます。
通常逮捕とは、警察が捜査を行い、裁判所に逮捕状を請求のうえで被疑者の元を訪ねて行われる逮捕です。
しかしこの通常逮捕は、法定刑が30万円以下の罰金、拘留または科料の犯罪の場合には、定まった住所がない、または正当な理由なく出頭に応じないときに限り行うものとされています(刑事訴訟法第199条)。
そのため、法定刑が30万円以下の罰金または科料である過失傷害罪においては、住所不定の場合や出頭を拒否した場合でなければ逮捕されないのが通常です。
過失傷害の被害に遭い、告訴したい場合
過失傷害罪は親告罪です。
そのため、犯人の処罰を望む場合には、告訴する必要があります。
告訴する際に提出する告訴状は、内容が不十分だと受理してもらうのは困難です。
犯人の処罰を求める意思や犯罪事実を具体的かつ明確に記載した、なるべく受理されやすい告訴状を作成しましょう。
しかし、自分でそうした的確な告訴状を作成するのは簡単ではないため、弁護士や行政書士などの専門家に告訴状を依頼するのもおすすめです。
なお当メディアでは、告訴状の書き方・出し方に関する知識も下記ページで解説しています。ぜひ参考にしてください。 ️
☞告訴状の書き方をわかりやすく解説! ️
☞告訴状の提出先は?
まとめ
今回は「過失傷害罪」の構成要件や刑罰の内容、また過失傷害罪での逮捕や告訴について解説しました。
最後に、今回の内容をおさらいしておきましょう。
■過失傷害罪は、過失によって人にケガを負わせることで成立する犯罪
■過失傷害罪の成立要件は「①過失があった」「②人がケガをする等傷害の結果が起きた」「③過失と傷害に因果関係があった」
■傷害罪と過失傷害罪の違いは「過失」と「故意」にある(傷害罪は「故意」がある場合に限り成立する)
■過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金または科料」
■過失傷害罪で逮捕されるケースは多くない
■過失傷害罪は親告罪のため、犯人の処罰を望む場合は告訴する必要がある